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『ふれんち茶懐石』〜七夕の節句〜

こんにちは。柔和の会の料理方、秋本です。このコラムでは、日本の風習や過去のイベントで提供した『ふれんち茶懐石』についてご紹介していきます

第3回 「七夕の節句」と『ふれんち茶懐石』

七夕の節句(しちせきのせっく)は、7月7日に行われる五節句のひとつです。中国から伝わった乞巧奠(きっこうでん)の風習が起源とされ、牽牛と織姫の伝説にまつわる星祭りとして、日本でも古くから親しまれてきました。短冊に願いをしたためる習わしや、五色の糸・索餅(さくべい)・そうめんなど、七夕には様々な供物や風習が存在し、夏の訪れとともに人々の願いを託す行事として継承されています。

ふれんち茶懐石のご紹介

アミューズ:「ローストビーフのタルタル きゅうりの網掛」

仏料理の「タルタルステーキ」に着想を得た先附は、刻んだローストビーフを薄焼きのパンに重ね、織姫の“機織り”を想起させるよう、薄く織り込んだ胡瓜を網目状にかぶせました。タルタルにはレモンのクーリを添え、初夏の始まりにふさわしい清涼感を演出。“牛”は七夕の主役のひとつ、牽牛星を象徴し、素材の選定から盛りつけに至るまで、星々の再会に込めた祈りを一皿に表現しました。

スープ:「野菜のコンソメと五色の絲」

野菜の皮や切れ端、昆布などから引いたコンソメは、古来の「屑籠」思想をもとに。無駄なく、滋味を大切に抽出したやさしい一杯です。そこに浮かぶ五色そうめんは、乞巧奠に飾られる五色の糸の象徴。添えられた大豆とパルメザンのチュイルには、香り豊かなハーブと花が添えられ、祈りと彩りを添えました。

前菜:「真鯛のムースと筍の挟み焼き 青紫蘇香」

青紫蘇を練り込んだ真鯛のムースを、薄くスライスした筍で挟み、やわらかく蒸しあげたのち、バターで香ばしく焼き上げました。ソースは真鯛の出汁にクリームとオイルを合わせ、青紫蘇の香味を纏わせたもの。付け合わせには、茄子の千切りと花穂紫蘇のサラダ、仕上げに茄子の皮のパウダーをふりかけて、落ち着いた風味を添えました。お供え物に使われる「干し鯛」や「筍」、「茄子」などの素材に着想を得た一皿です。

メイン:「鰻のベニエ すもものソース」

七夕の夜、天の川を渡る星々の再会を映した主菜。香ばしく揚げた鰻に若穂(ベビーコーン)と茗荷のピクルスを添え、生命の躍動と夏の稔りを盛り込みました。ソースは、青唐辛子を塩ゆでして裏漉ししたものと、火入れした里芋を合わせた緑のピューレ。口当たりやわらかく、後味にほのかな辛み。もう一方には、プルーンを使った濃密なソース。甘さの中にある翳りが、出会いと別れの余韻を引き立てます。光と影、香と熱──ふたつの星が交わるように、一皿に結ばれた七夕の“いのちの表現”です。

デザート:「五色豆と抹茶の笹の葉包みパン / パート・ド・フリュイ / プラリネクリームのエクレア」

・五色豆と抹茶の笹の葉包みにパン:粽をモチーフにした、抹茶と五色豆入りの蒸しパン。笹の葉で包み、香りと清らかさを込めた甘味。
・パート・ド・フリュイ:白桃・洋梨・ラズベリーのパート・ド・フリュイ。中国の糖葫芦に着想を得て、七夕のお供え物である「桃」や「梨」にちなむ果実で仕上げました。
・プラリネクリームのエクレア:カラメルを纏ったエクレア。中には、胡桃のプラリネクリーム。索餅や“かりんとう”など、七夕菓子の意匠を現代の洋菓子で再構成したものです。

七夕の伝承に想いを重ねた『ふれんち茶懐石』で、夏の風趣と日本の美しい文化、そして柔和の会が提案する新しい食文化をぜひご堪能ください。

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